コラム

STEP5-7 後継者教育の進め方:数字と戦略で育てる実務ポイント

事業承継・グループ経営

事業承継の最大の課題は「後継者が育っていない」ことです。
株や資産を譲っただけでは、会社は安定しません。
後継者が経営者としての能力を身につけ、社員・銀行・取引先から信頼される存在になることが不可欠です。

CFIOの視点では、後継者教育は単なる「経験の引き継ぎ」ではなく、数字と戦略で経営を語れる人材に育てることを目的としています。

1. なぜ後継者教育が重要か?

(1) 数字がわからない社長は信頼されない

社員や銀行に説明できなければ、リーダーとしての説得力を失う。

(2) 感覚経営からの脱却

創業者は勘や経験で判断できても、二代目以降は仕組み経営が必要。

(3) 承継は社長一人の問題ではない

社員や取引先も「この社長についていけるか」を見極めている。

2. 後継者教育の3本柱(CFIO流)

(1) 数字力の育成

  • 財務三表を読み解ける力
  • 部門別損益やKPIを語れる力
  • 銀行や投資家に説明できる力

(2) 戦略思考の育成

  • 経営計画を立てる力
  • MAS監査を通じたモニタリング力
  • 成長投資やM&Aの意思決定力

(3) リーダーシップの育成

  • 幹部会議をリードする力
  • 社員を巻き込み動かす力
  • 社外での人脈形成力

3. 実務での後継者教育ステップ

ステップ1:財務の基本教育

  • 月次試算表を一緒に確認
  • 銀行交渉に同席させる
  • 「数字で語る習慣」を徹底

ステップ2:部門経営を任せる

  • まずは1部門の責任者に
  • 売上・利益目標を持たせ、PDCAを回す経験を積ませる

ステップ3:幹部会議での発言を促す

  • 発言者ではなく「数字で議論する参加者」として育てる
  • いずれは議長を務め、会議をリードできるようにする

ステップ4:経営計画を作成させる

  • 将軍の日や経営計画合宿に参加させる
  • 自ら計画を数字に落とし込み、発表する

ステップ5:外部経験を積ませる

  • 同業他社や異業種の経営者交流
  • MBAや経営セミナーでの学び
  • 社外役員やコンサルタントとの議論

4. ケーススタディ:教育不足で失敗したU社

U社(年商10億円)は、創業者が急逝し、二代目が急遽社長に就任。
しかし…

  • 数字を読めず銀行に説明できない
  • 社員から「頼りない」と見られ、離職者が続出
  • 取引先も不安視し、受注が減少

結果、2年で業績が3割減少。教育不足の典型例です。

5. ケーススタディ:段階的教育で成功したV社

V社(年商20億円)は、10年前から後継者教育を開始。

  • 月次会議に同席させ、数字の読み方を徹底
  • 部門長を経験させ、マネジメント力を養成
  • 経営計画を自ら作成・発表
  • 海外研修やMBAで戦略思考を磨く

結果、社長交代後もスムーズに経営が移行し、社員・銀行・取引先から「頼れる二代目」と高い評価を受けています。

6. 後継者教育のポイント(CFIO流チェックリスト)

  • 数字で会社を説明できるか?
  • 銀行や投資家に信頼されるか?
  • 経営計画を自ら作れるか?
  • 幹部会議をリードできるか?
  • 社外ネットワークを持っているか?

まとめ

後継者教育のゴールは、数字と戦略で会社を語れる経営者を育てることです。

  • 株や資産の承継より前に「人の承継」を進める
  • 数字力・戦略思考・リーダーシップの三本柱で育成
  • 10年単位で段階的に経験を積ませる

CFIOのSTEP5では、単なる座学や経験談ではなく、経営の実務に基づいた教育プログラムを設計し、承継を「リスク」から「成長のチャンス」に変えていきます。