事業承継の最大の課題は「後継者が育っていない」ことです。
株や資産を譲っただけでは、会社は安定しません。
後継者が経営者としての能力を身につけ、社員・銀行・取引先から信頼される存在になることが不可欠です。
CFIOの視点では、後継者教育は単なる「経験の引き継ぎ」ではなく、数字と戦略で経営を語れる人材に育てることを目的としています。
1. なぜ後継者教育が重要か?
(1) 数字がわからない社長は信頼されない
社員や銀行に説明できなければ、リーダーとしての説得力を失う。
(2) 感覚経営からの脱却
創業者は勘や経験で判断できても、二代目以降は仕組み経営が必要。
(3) 承継は社長一人の問題ではない
社員や取引先も「この社長についていけるか」を見極めている。
2. 後継者教育の3本柱(CFIO流)
(1) 数字力の育成
- 財務三表を読み解ける力
- 部門別損益やKPIを語れる力
- 銀行や投資家に説明できる力
(2) 戦略思考の育成
- 経営計画を立てる力
- MAS監査を通じたモニタリング力
- 成長投資やM&Aの意思決定力
(3) リーダーシップの育成
- 幹部会議をリードする力
- 社員を巻き込み動かす力
- 社外での人脈形成力
3. 実務での後継者教育ステップ
ステップ1:財務の基本教育
- 月次試算表を一緒に確認
- 銀行交渉に同席させる
- 「数字で語る習慣」を徹底
ステップ2:部門経営を任せる
- まずは1部門の責任者に
- 売上・利益目標を持たせ、PDCAを回す経験を積ませる
ステップ3:幹部会議での発言を促す
- 発言者ではなく「数字で議論する参加者」として育てる
- いずれは議長を務め、会議をリードできるようにする
ステップ4:経営計画を作成させる
- 将軍の日や経営計画合宿に参加させる
- 自ら計画を数字に落とし込み、発表する
ステップ5:外部経験を積ませる
- 同業他社や異業種の経営者交流
- MBAや経営セミナーでの学び
- 社外役員やコンサルタントとの議論
4. ケーススタディ:教育不足で失敗したU社
U社(年商10億円)は、創業者が急逝し、二代目が急遽社長に就任。
しかし…
- 数字を読めず銀行に説明できない
- 社員から「頼りない」と見られ、離職者が続出
- 取引先も不安視し、受注が減少
結果、2年で業績が3割減少。教育不足の典型例です。
5. ケーススタディ:段階的教育で成功したV社
V社(年商20億円)は、10年前から後継者教育を開始。
- 月次会議に同席させ、数字の読み方を徹底
- 部門長を経験させ、マネジメント力を養成
- 経営計画を自ら作成・発表
- 海外研修やMBAで戦略思考を磨く
結果、社長交代後もスムーズに経営が移行し、社員・銀行・取引先から「頼れる二代目」と高い評価を受けています。
6. 後継者教育のポイント(CFIO流チェックリスト)
- 数字で会社を説明できるか?
- 銀行や投資家に信頼されるか?
- 経営計画を自ら作れるか?
- 幹部会議をリードできるか?
- 社外ネットワークを持っているか?
まとめ
後継者教育のゴールは、数字と戦略で会社を語れる経営者を育てることです。
- 株や資産の承継より前に「人の承継」を進める
- 数字力・戦略思考・リーダーシップの三本柱で育成
- 10年単位で段階的に経験を積ませる
CFIOのSTEP5では、単なる座学や経験談ではなく、経営の実務に基づいた教育プログラムを設計し、承継を「リスク」から「成長のチャンス」に変えていきます。
