中小企業における事業承継は「親族に引き継ぐか」「社員に引き継ぐか」という二択で語られることが多いです。
しかし、現実には親族に後継者がいない、社員が経営を担うには力不足、というケースが少なくありません。
そこで近年注目されているのが M&Aを事業承継の手段として活用する方法 です。
売却による承継、買収による承継のいずれも、戦略的に使うことで会社の未来を切り開くことができます。
1. M&Aは「出口戦略」だけではない
(1) 売却=会社を守る手段
創業者が高齢で後継者不在の場合、M&Aで信頼できる相手に売却することで、社員・取引先・顧客を守ることができます。
(2) 買収=成長のための承継
後継者が経営を引き継ぐ際に、新たな事業や販路をM&Aで獲得する。
「守り」だけでなく「攻め」の承継が可能になります。
(3) 承継戦略の一環
M&Aは「承継できないから最後の手段」ではなく、事業承継を円滑に進めるための戦略的オプションです。
2. 売却による承継のメリット
- 後継者不在を解決できる
親族や社員に後継者がいなくても、会社を残せる。 - 従業員・取引先を守れる
廃業ではなく譲渡することで、雇用や取引が継続される。 - 創業者が現金を得られる
株式や事業を売却することで、老後資金や家族への資産承継が可能になる。
3. 買収による承継のメリット
- 成長の加速
新しい事業や販路を獲得できる。 - 後継者教育の一環
M&Aを通じて、後継者が経営判断力や統合マネジメントを学ぶことができる。 - グループ経営への布石
複数法人を統括する持株会社スキームと相性が良い。
4. CFIO流・M&A承継の活用法
(1) 売却の場合
- 株式譲渡を基本とし、経営権を移転
- 売却益を老後資金や相続対策に活用
- 取引先・社員に不安を与えないよう、事前準備を徹底
(2) 買収の場合
- 後継者が主導してM&Aを経験
- シナジー(人材・販路・技術)を重視
- 統合プロセス(PMI)を仕組み化し、失敗を防ぐ
(3) バランスの設計
- 「自社を売る」「他社を買う」を一方的に考えるのではなく、会社の未来にとって最適な承継パターンを選ぶ。
5. ケーススタディ①:売却で会社を守ったS社
S社(年商5億円)は、創業者が70歳を超えても後継者がいませんでした。
CFIOの支援でM&A仲介会社と連携し、同業大手に株式譲渡。
結果:
- 社員の雇用は維持
- 創業者は売却益で安心の老後資金を確保
- 取引先も引き続き取引継続
「廃業」ではなく「売却」という選択肢で、会社も社員も守られました。
6. ケーススタディ②:買収で成長承継に成功したT社
T社(年商12億円)は、二代目への承継を控えていました。
そのタイミングで、CFIOのアドバイスにより隣接業種のM&Aを実施。
- 二代目がM&Aの交渉を主導
- PMIで幹部会議を統合
- 事業シナジーで売上が3年間で150%に拡大
承継を単なる「引き継ぎ」ではなく「成長の起点」とすることに成功しました。
7. M&Aを承継戦略に組み込む際の注意点
- 急ぎすぎない:準備不足は失敗のもと
- 相手選びを間違えない:文化や方針が合わないと混乱する
- 顧問税理士任せにしない:M&Aの専門知識が必須
- 銀行・取引先への説明を軽視しない:信用不安を招く可能性がある
まとめ
M&Aは事業承継の「最後の手段」ではなく、戦略的に組み込むべき承継オプションです。
- 売却によって後継者不在を解決し、社員と会社を守る
- 買収によって後継者に経営力を付け、会社を成長させる
- グループ経営や持株会社化と組み合わせることで、承継の幅が広がる
CFIOのSTEP5では、M&Aを「守り」と「攻め」の両面で承継戦略に組み込み、会社の未来をつなぐ実践的スキームを提案します。
