日本の中小企業の多くが直面する大きな課題の一つが 事業承継 です。
中小企業庁の調査によれば、後継者不足により2025年までに約127万人の経営者が70歳を超えるとされ、事業承継は「国全体の経済課題」とも言えます。
しかし実務現場では、事業承継を「相続税や贈与税を安くするテクニック」として捉えるケースが非常に多いのが実情です。
確かに税金対策は重要ですが、それだけに目を奪われると承継は失敗に終わります。
CFIOの視点では、事業承継とは「会社の未来」と「家族の安心」を同時に実現する 総合戦略 であり、税務対策はその一部にすぎません。
1. 税金対策だけの事業承継が失敗する理由
(1) 後継者が育っていない
株や資産を移しただけでは会社は動きません。
後継者が「数字を語れない」「社員をまとめられない」状態では、承継後に会社が弱体化します。
(2) 組織が承継されていない
社長一人に依存する経営は、引退と同時に混乱を招きます。
承継すべきは「権限と責任」「会議の仕組み」「経営の型」であり、これを整えなければ会社は持続できません。
(3) 資産と事業が分断されている
事業承継と資産承継を別々に考えると、株主と経営者が分かれ、経営権の分裂を招きます。
(4) 銀行や取引先からの信用低下
「税金を減らすために株を分散」した結果、経営権が不安定になり、銀行や取引先からの評価が落ちることもあります。
2. 事業承継の本質は「会社を未来につなぐこと」
事業承継の目的は「税金を減らすこと」ではなく、会社を持続的に成長させることです。
- 経営を担う後継者の育成
- 組織の仕組みを承継
- 資産と経営権の一体的承継
- 銀行・社員・取引先の安心感の確保
この4つが揃って初めて「承継成功」と言えます。
3. CFIO流・事業承継の考え方
(1) 三位一体の承継
- 人の承継:後継者教育、幹部育成
- 事業の承継:会議体制、経営計画、KPI管理
- 資産の承継:株式・不動産・金融資産の移転
(2) 承継は「10年計画」で考える
税務対策は数年単位でも可能ですが、人材育成や組織承継には時間がかかります。
早めに取り組むことで、選択肢を広げられます。
(3) グループ経営の視点を持つ
持株会社化や資産管理会社を活用し、株式や資産を整理して承継をスムーズに。
4. ケーススタディ:税金対策偏重で失敗したK社
K社(年商8億円)の創業者は、顧問税理士の勧めで株式を複数の子どもに分散贈与しました。
確かに相続税評価は下がりましたが、結果として…
- 子どもたちの間で経営方針が対立
- 銀行から「経営権が不安定」と見られ融資が滞る
- 後継者候補が育っておらず、結局外部に会社を売却
「税金は減ったが、会社は失われた」という典型的な失敗例です。
5. ケーススタディ:総合戦略で成功したL社
L社(年商15億円)は、CFIOの支援で10年計画の承継に取り組みました。
- 5年前から後継者を幹部会議に参加させ、数字経営を教育
- 資産管理会社を設立し、株式を集約
- MAS監査で幹部組織を強化し、承継後も回る仕組みを構築
- 銀行と承継計画を共有し、長期融資枠を確保
結果、スムーズに世代交代が進み、承継後も売上は成長を続けています。
まとめ
事業承継の本質は「税金を減らすこと」ではなく、会社を未来につなぐことです。
- 税金対策だけに偏ると失敗する
- 人・事業・資産の三位一体で承継する
- 承継は10年単位で計画し、後継者と組織を育てる
- 銀行・社員・取引先から信頼される承継を目指す
CFIOのSTEP5では、税務対策にとどまらず、後継者育成・組織承継・資産戦略を統合した承継支援を行います。
これにより、会社の未来と家族の安心を同時に守ることができるのです。
