中小企業の成長において、銀行との関係性は極めて重要です。
どれだけ利益を出していても、資金調達がスムーズにいかないと、投資のタイミングを逃し、成長を鈍化させてしまいます。
逆に、銀行から「格付が高い会社」と評価されれば、低金利・長期融資を受けられ、攻めの経営を展開できます。
その鍵となるのが 財務格付診断 です。
1. 財務格付とは何か?
(1) 銀行が会社をどう見ているかの「成績表」
銀行は、企業の財務内容を点数化し「格付」を付けています。
これは社長に開示されることはありませんが、融資可否・金利・融資額に直結します。
(2) 財務格付の要素
- 定量評価(決算書の数値):70〜80%
- 定性評価(経営者の資質・事業計画・業界動向):20〜30%
つまり、決算書の数字だけでなく「経営の型」や「将来性」も評価対象です。
2. 財務格付診断の重要性
(1) 銀行戦略の出発点
自社の格付を知らずに銀行交渉をしても、的外れになりがちです。
まずは「現在の格付水準」を把握し、改善点を明確にすることが必要です。
(2) 成長資金を確保できる
格付を1ランク改善できれば、融資条件は大きく変わります。
- 金利が下がる
- 融資枠が広がる
- 担保・保証が軽減される
(3) 経営改善の指標になる
格付のロジックを知ることで、財務改善の優先順位が明確になります。
3. 銀行が重視する指標
- 自己資本比率(20%以上が望ましい)
- 債務償還年数(10年以内)
- 経常利益率(3%以上)
- インタレスト・カバレッジ・レシオ(利払能力)
- 流動比率・固定長期適合率
単なる「利益の大小」ではなく、「返済能力」と「安定性」が重要視されます。
4. CFIO流・財務格付診断の進め方
ステップ1:決算書分析
- 銀行格付ロジックに基づいて点数化
- 自社の格付水準を仮診断
ステップ2:改善シミュレーション
- 利益率改善、借入返済スケジュール変更、資本増強の効果を数値化
ステップ3:経営計画との統合
- 格付改善を盛り込んだ中期経営計画を作成
- 銀行交渉の材料に活用
ステップ4:実行・モニタリング
- 四半期ごとに格付をシミュレーションし、改善の進捗を確認
5. 銀行戦略の実務ポイント
(1) メインバンクとの関係強化
- 定期的に試算表・計画書を提出
- 単なる借り手ではなく「パートナー」として関係を築く
(2) 複数銀行の使い分け
- 運転資金:メインバンク
- 設備資金:地銀・信金
- 長期投資:政府系金融機関(日本政策金融公庫など)
(3) 銀行との“情報格差”をなくす
銀行は「情報がある会社」を評価します。
財務格付診断を行い、数字で説明できる体制を作ることが交渉力につながります。
6. ケーススタディ:格付改善で成長資金を確保したJ社
J社(年商13億円)は、売上は伸びていたものの、銀行からの評価が低く、思うように融資を受けられませんでした。
CFIOが財務格付診断を実施したところ、
- 債務償還年数が15年超
- 自己資本比率が低い
ことが課題と判明。
改善策として、
- 利益留保を積み上げて自己資本を強化
- 不採算部門を縮小し、利益率を改善
- 借入返済スケジュールをリスケジュール
その結果、格付が1ランク上昇し、メインバンクから5億円の長期融資を低金利で確保。
投資資金を得たことで新工場を建設し、売上をさらに拡大しました。
まとめ
財務格付診断は、銀行戦略の出発点であり、成長資金を確保するための必須ツールです。
- 銀行は「格付」で会社を評価している
- 自社の格付を把握し、改善シナリオを描くことが重要
- 格付改善は融資条件の向上につながり、成長投資を後押しする
CFIOのSTEP4では、財務格付診断をベースに銀行戦略を設計し、経営計画と連動させることで、会社の成長を加速させます。
