多くの中小企業経営者が「数字は苦手だ」と口にします。
しかし、成長する会社と停滞する会社を分けるのは、まさに「数字で語れるかどうか」です。
数字は単なる会計資料ではなく、経営の共通言語です。
社員や銀行、投資家、取引先と「感覚」ではなく「数字」で会話できる経営者こそが、信頼され、意思決定を誤らず、会社を成長へ導けます。
1. なぜ「数字で語る経営」が必要なのか?
(1) 感覚経営の限界
売上が1億円未満なら、社長の勘や経験で会社は回ります。
しかし売上が3億円を超えると、社員数や取引先が増え、感覚経営ではコントロールできなくなります。
(2) 社外との信頼関係
銀行や投資家は「数字」で会社を評価します。
「やる気があります」「頑張ります」と言っても、数字で裏付けられなければ信用は得られません。
(3) 社員を巻き込む
社員は「社長の感覚」より「数字の目標」に動かされます。
KPIや部門別損益を示すことで、全員が同じ方向に進めるのです。
2. 経営者が押さえるべき数字の基本
(1) 損益計算書(PL)
- 売上・粗利・営業利益
- 固定費と変動費の割合
- 利益率の推移
(2) 貸借対照表(BS)
- 現預金残高
- 借入金と自己資本の比率
- 不良資産の有無
(3) キャッシュフロー計算書
- 営業キャッシュフローがプラスかどうか
- 借入返済・投資・配当のバランス
これらを「月次」で把握することが必須です。
3. 数字で語る経営の実践ステップ
ステップ1:月次決算の早期化
- 試算表を翌月10日までに出す
- 現金主義ではなく、発生主義で管理
- 社長が毎月レビューする習慣をつける
ステップ2:部門別損益の導入
- 売上・利益を部門ごとに分ける
- 儲かっている部門と赤字部門を明確化
- 赤字部門の改善・撤退判断を迅速に行う
ステップ3:KPIの設定
- 受注件数・粗利率・稼働率など、行動につながる指標を選ぶ
- 社員が自分の数字を追える仕組みをつくる
- 経営会議でKPI進捗をレビューする
4. 数字を使った社内外コミュニケーション
(1) 社内
- KPIを掲示して社員が毎日確認
- 会議では「なぜ未達か?どう改善するか?」を数字で議論
(2) 銀行
- 試算表と事業計画をセットで提出
- 財務格付を意識した「数字で見せる経営」を実践
(3) 取引先
- 数字で交渉することで価格競争に巻き込まれにくい
- 「粗利率がこれ以上下がると継続できない」と根拠を示せる
5. CFIO流「数字で語る経営」
CFIOでは「数字で語る経営」を以下の3層で整理します。
- 現状把握(過去数字)
月次決算・部門別損益・キャッシュフロー - 未来設計(計画数字)
経営計画・資金繰り予測・投資シナリオ - コミュニケーション(伝える数字)
社員向けKPI・銀行向け格付資料・株主への報告
これにより、数字が「作るもの」から「使うもの」へ変わります。
6. ケーススタディ:数字を使えず失敗したB社と、数字でV字回復したC社
B社(年商5億円)は、社長が「感覚」で経営していました。
数字は税理士任せで、試算表は年に数回しか見ませんでした。
結果、赤字部門に気づかず資金繰りが悪化、銀行からの信用も低下し、融資が受けられない事態に。
一方C社(年商6億円)は、CFIOの支援で部門別損益とKPI管理を導入。
- 赤字部門を切り離し
- 粗利率を3%改善
- 銀行交渉も「数字ベース」で行い、金利引き下げに成功
結果、2年で営業利益率が倍増しました。
まとめ
「数字で語る経営」は、中小企業が成長するための必須条件です。
- 社長の感覚経営には限界がある
- 数字は社員・銀行・取引先との共通言語
- 月次決算・部門別損益・KPI管理を基盤にする
- CFIO流では「現状把握・未来設計・コミュニケーション」の3層で数字を活用
数字を“作る”経営から、数字を“語る”経営へ。
これがSTEP4の出発点であり、持続的成長の最大の武器となります。
