コラム

STEP3-8 事業承継を見据えた“法人+個人”の資産ポートフォリオ設計

資産運用戦略

中小企業の社長にとって最大の経営イベントのひとつが 事業承継 です。
「会社は後継者に引き継ぐ」「資産は家族に残す」――シンプルに聞こえますが、現実には法人資産と個人資産が複雑に絡み合い、承継の大きな障害となります。

その解決策が、法人と個人を一体で見据えた 資産ポートフォリオ設計 です。
資産の「配置」と「役割」を整理することで、承継時の税負担やトラブルを大幅に軽減できます。

1. なぜ法人と個人を分けて考えてはいけないのか?

(1) 社長資産の大半は会社に偏っている

自社株、不動産、会社に貸し付けたお金など、法人と個人が混在しています。

(2) 税負担が複雑化する

法人税・所得税・相続税が同時に関わり、分けて考えると最適化できません。

(3) 承継時のトラブル

「これは会社のお金?個人のお金?」という線引きが曖昧なまま承継すると、後継者や家族の間で争いが起きやすいのです。

だからこそ「法人+個人を統合したポートフォリオ設計」が必要です。

2. 法人+個人ポートフォリオ設計の基本フレーム

(1) 法人(本業会社)

  • 本業に必要な運転資金・投資資金を確保
  • 資金繰りを優先し、余剰資金は資産管理会社へ移転

(2) 資産管理会社

  • 金融資産・不動産の運用拠点
  • 法人税率を活用して効率的に資産を増やす
  • 将来は株式を承継しやすい形で次世代へ移す

(3) 個人

  • 老後資金・生活費の確保(NISA・iDeCo・共済など)
  • 家族への直接的な資産移転
  • 流動性のある資産を保持し、納税資金を準備

3. 承継を見据えたポートフォリオ戦略

(1) 自社株の位置づけ

  • 承継の中心資産であり、早期から評価引き下げ策を検討
  • 資産管理会社やホールディングス化を活用してスムーズに移転

(2) 不動産の位置づけ

  • 法人保有で承継を容易に
  • 安定収益資産として資産管理会社に集中させる

(3) 金融資産の位置づけ

  • 流動性を重視し、納税資金や生活資金に充てる
  • 長期積立で次世代に引き継げる成長資産を育成

4. CFIOの視点:資産は“配置と役割”で考える

CFIOでは、資産を「単に持つ」のではなく、配置と役割で整理します。

  • 会社に置く資産 → 事業成長のため
  • 資産管理会社に置く資産 → 資産運用・承継のため
  • 個人に置く資産 → 生活・老後・納税のため

この役割分担を明確にすることで、承継時の混乱を最小化し、税務負担も軽減できます。

5. ケーススタディ:承継を見据えたY社の設計

Y社(年商14億円)の社長は、会社に多額の現預金をため込み、個人資産はほとんどない状態でした。
相続試算をすると、巨額の相続税が発生することが判明。

CFIOの提案により以下を実行。

  1. 本業会社の余剰資金を資産管理会社へ移転
  2. 資産管理会社で不動産と株式投資を実施
  3. 個人資産はNISA・iDeCoで流動性を確保
  4. 承継時の納税資金を金融資産で準備

結果、相続税負担を抑えつつ、承継後も会社と家族が安心して生活できる資産構成が整いました。

まとめ

事業承継を成功させるには、法人と個人を分けて考えるのではなく、統合してポートフォリオを設計することが不可欠です。

  • 法人 → 事業資金
  • 資産管理会社 → 資産運用・承継準備
  • 個人 → 生活資金・納税資金

CFIOのSTEP3では、資産の配置と役割を明確にし、「法人+個人」の一体設計を提案します。
承継を見据えたポートフォリオ戦略を整えることで、会社の未来と家族の安心が同時に実現できるのです。