中小企業の社長にとって、資産形成の要となるのが 資産管理会社の活用 です。
これまで本業会社で稼ぎ、税務戦略でお金を守ってきましたが、その次に必要なのは「資産をどう運用して増やすか」です。
資産管理会社を活用すれば、法人税制のメリットを受けながら効率的に運用でき、さらに承継対策にもつなげることができます。
本記事では、資産管理会社を使った金融資産運用の仕組みを解説します。
1. なぜ資産管理会社で運用するのか?
(1) 法人税率のメリット
法人税率は個人の所得税率より低いため、運用益にかかる税負担を抑えられます。
(例:個人の株式譲渡益課税は20.315%ですが、法人なら利益を他の費用と相殺できるケースもあります)
(2) 資産と経営の分離
資産管理会社で運用することで、本業会社と資産を切り分けられ、経営リスクから資産を守ることができます。
(3) 承継を見据えた設計
資産管理会社の株式を子どもに移転すれば、金融資産を分割しやすく、相続トラブルを回避できます。
2. 資産管理会社で運用できる金融資産の種類
(1) 株式・投資信託
- 国内外の株式やインデックスファンドを法人名義で保有
- 長期運用により法人資産を着実に増やす
(2) 債券・預金
- 安定運用のための守り資産
- 流動性を確保しながらリスク分散
(3) 不動産関連商品
- REITや不動産ファンドを法人で保有
- 本業会社の余剰資金を効率的に運用
3. 実務でのスキーム例
スキーム①:本業会社 → 資産管理会社 → 投資
- 本業会社から資産管理会社に貸付または配当
- 資産管理会社が株式・投資信託に投資
- 運用益は法人内に留保し、承継資産として育成
スキーム②:資産管理会社を使った相続対策
- 子どもを資産管理会社の株主にしておく
- 将来の資産増加分を子どもに帰属させ、相続税を軽減
4. 注意点と失敗例
(1) 投機的運用は厳禁
資産管理会社は「長期安定運用」が前提。短期売買や過度なリスク投資は資金繰り悪化を招きます。
(2) 税務処理の複雑化
法人での投資は、会計処理や申告が複雑になるため、税理士の関与が不可欠です。
(3) 本業とのバランスを欠かない
資産管理会社に資金を移しすぎると、本業会社の成長資金が不足します。あくまでバランスが重要です。
5. CFIOの視点:金融資産運用は“第二の財務部”
資産管理会社を単なる「節税箱」にするのではなく、
「会社グループ全体の財務部」 として位置づけることがCFIO流の考え方です。
- 本業会社 → 稼ぐ
- 資産管理会社 → 運用で守り・増やす
- 個人 → 生活・老後資金を確保
この三層を有機的につなぐことで、税務・財務・承継が一体化された運用体制が完成します。
6. ケーススタディ:資産管理会社で運用を始めたU社
U社(年商12億円)の社長は、個人名義で株式投資をしていましたが、税負担が大きく、相続も不安でした。
そこで資産管理会社を設立し、以下を実行。
- 本業会社から資産管理会社へ利益を移転
- 資産管理会社で投資信託を毎月積立
- 将来的に子どもを株主にして承継を計画
結果、税負担を抑えつつ、資産の承継準備まで同時に進めることができました。
まとめ
資産管理会社を活用した金融資産運用は、
- 税負担の軽減
- 経営リスクからの資産分離
- 承継対策
という3つの効果を同時に実現します。
大切なのは「投資そのもの」ではなく、
グループ全体の資産運用設計図を描くこと。
CFIOのSTEP3では、資産管理会社を軸に法人・個人・承継をつなげ、資産運用を経営戦略に昇華させます。
