中小企業の社長にとって、最大の悩みのひとつが 「会社のお金」と「個人のお金」の境界線をどう引くか」 です。
多くの経営者が、この線引きを曖昧にしたまま資産運用を始め、結果として「税務リスク」「資金繰り悪化」「相続トラブル」を招いてしまいます。
本記事では、会社と個人の資金をどう分け、どう活用して運用すべきかを整理します。
1. 会社と個人のお金が混ざるリスク
(1) 経費と私費の混同
社長の生活費や趣味の支出を経費で処理してしまうと、税務調査で否認され追徴課税を受ける可能性があります。
(2) 資金繰りの不透明化
会社の資金と個人の資金が混ざると、正確な資金繰りが把握できず、銀行交渉に不利になります。
(3) 承継時の混乱
「これは会社のお金?それとも社長個人のお金?」と家族が争う原因になり、相続トラブルを招きます。
まず大前提として、会社と個人は明確に切り分けることが必要です。
2. 会社のお金をどう運用すべきか
(1) 会社の余剰資金の基本方針
- 本業の資金繰りを最優先
- 余剰資金は「安全性」と「流動性」を重視
- 長期投資は資産管理会社を経由する
(2) 会社資金での運用対象
- 設備投資や人材育成(最もリターンが大きい投資先)
- 短期の預金・国債など、安全性の高い金融商品
- グループ戦略の一環としての不動産・金融資産(資産管理会社経由が基本)
(3) 避けるべき運用
- 社長の趣味的投資(FXや仮想通貨など)を会社資金で行うこと
- 流動性の低い投資に大きく資金を投じること
3. 個人のお金をどう運用すべきか
(1) 個人資産の基本方針
- 老後資金と相続を意識
- 税制優遇を最大限活用(NISA・iDeCo・小規模企業共済など)
- 「生活防衛資金」を確保したうえで長期積立に回す
(2) 個人資産での運用対象
- 積立投資(インデックスファンド、ETF)
- 不動産投資(ただし法人との役割分担を明確に)
- 生命保険・年金保険を活用した保障+積立
4. 資産管理会社を使った“橋渡し”
会社と個人の中間に位置するのが 資産管理会社 です。
- 本業会社からの利益を移し、長期投資に回す
- 法人税率を活用し、効率的に資産を増やす
- 将来は子どもに株式を承継し、資産をスムーズに移転
資産管理会社を挟むことで、会社と個人のお金の「橋渡し」が可能になります。
5. CFIOの視点:三層構造で考える
CFIOでは、会社と個人のお金を次の三層で整理します。
- 会社資金(本業用)
→ 資金繰り・投資・設備など事業成長に直結する運用 - 資産管理会社資金(成長・承継用)
→ 金融資産・不動産への投資、税務最適化、相続準備 - 個人資金(生活・老後用)
→ NISA・iDeCo・共済などで生活安定と長期積立
この三層構造を意識することで、混乱なく最適な資産形成ができます。
6. ケーススタディ:三層構造で整理したS社
S社(年商8億円)の社長は、会社のお金で株式投資を行い、資金繰りが悪化。
銀行評価も下がり、融資が難しくなっていました。
CFIOの提案により、次のように整理。
- 会社資金は本業と短期運用に限定
- 資産管理会社を設立し、不動産と金融資産の長期投資を実施
- 個人資金はNISAと小規模企業共済に集中
結果、資金繰りが安定し、法人・個人の資産形成が同時に進む体制ができました。
まとめ
会社と個人のお金を混ぜることは、税務・資金繰り・承継すべてにリスクを生みます。
- 会社資金 → 本業+短期運用
- 個人資金 → 老後資金+税制優遇
- 資産管理会社 → 中長期投資+承継準備
CFIOのSTEP3では、この三層を整理し、法人と個人を一体で設計します。
「どこに、いくら、どう運用するか」を明確にすることで、節税と資産形成が両立できるのです。
