コラム

STEP2-9 キャッシュを守り抜く!保険・退職金・積立制度の活用法

税務戦略

中小企業経営において、キャッシュは血液のような存在です。
売上や利益があっても、キャッシュがなければ会社は倒産します。
特に社長にとって重要なのは、 キャッシュを減らさず、将来の備えを作る仕組み を構築することです。

その具体策が「保険・退職金・積立制度」の活用です。
ただし、闇雲に商品を導入しても逆効果。
正しく設計すれば節税と資産形成を両立できますが、誤った使い方をすればキャッシュを圧迫し、将来の課税リスクを生むこともあります。

本記事では、経営者がキャッシュを守り抜くための制度活用法を整理します。

1. 保険の正しい活用法

(1) 生命保険の位置づけ

  • 万一の際に会社や家族を守る「保障」機能
  • 節税効果を狙うのではなく、本来のリスクヘッジ目的で導入すべき

(2) 法人保険のメリット

  • 保険料の一部を損金算入できる
  • 解約返戻金を将来の資金に活用できる
  • 万一のときに死亡保険金で事業継続資金を確保できる

(3) 注意点

  • 過度な保険加入は資金繰りを悪化させる
  • 税制改正により節税効果が縮小しているため、保障と積立のバランスが重要

保険は「節税商品」ではなく「リスク管理+キャッシュの平準化ツール」として使うことが大切です。

2. 退職金制度の活用

(1) 社長の退職金

  • 退職金は法人の損金算入が認められ、個人は退職所得控除で税負担が大幅に軽減される
  • 節税と老後資金準備を同時に実現できる

(2) 従業員の退職金

  • 中小企業退職金共済(中退共)を活用すれば、掛金が損金算入できる
  • 従業員の定着率向上や採用面でのアピールにもつながる

(3) 留意点

  • 無理のない掛金設計が必要
  • 将来の支給原資をどう準備するか、長期的な視点が不可欠

3. 積立制度の活用

(1) 中小企業倒産防止共済(経営セーフティ共済)

  • 掛金は全額損金算入可能
  • いざというときに無担保・無保証で借入可能
  • 節税と資金繰り対策を両立できる

(2) 小規模企業共済

  • 掛金が全額所得控除
  • 社長個人の退職金制度として活用可能
  • 将来の資産形成と税負担軽減を両立

(3) 企業型確定拠出年金(企業型DC)

  • 法人で掛金を拠出し、従業員の老後資金形成を支援
  • 福利厚生として優秀な制度で、法人の社会的信用も高める

4. CFIOの視点:キャッシュフローと連動させる

CFIOが重視するのは「キャッシュフローと制度の連動」です。

  • 保険料や掛金が資金繰りを圧迫していないか?
  • 解約時や受取時の課税を見越した設計になっているか?
  • 本業の成長資金を削っていないか?

これらを総合的にチェックし、短期の節税だけでなく「長期的にキャッシュが残る設計」を目指します。

5. ケーススタディ:制度活用で安心を得たQ社

Q社(年商5億円)の社長は、法人保険に年間1,500万円加入していました。
しかし、資金繰りが苦しくなり、解約返戻金を取り崩して逆に課税される事態に。

CFIOが関与し、以下を実行しました。

  1. 保険を必要最低限の保障型に整理
  2. 経営セーフティ共済に加入し、資金繰りの安全弁を確保
  3. 社長個人で小規模企業共済を活用し、将来の退職金準備
  4. 従業員には中退共を導入し、福利厚生を強化

結果、年間キャッシュフローは改善し、節税効果を維持しながら「守り」と「積立」の両立ができました。

まとめ

キャッシュを守ることは、経営者にとって最重要課題です。

  • 保険はリスク管理+キャッシュ平準化のツール
  • 退職金制度は節税と老後資金準備を両立
  • 積立制度は税制優遇を活かしつつ資金繰りの安全弁になる

CFIOのSTEP2では、これらを単発の制度導入ではなく「資金繰り設計」に落とし込みます。
目的は節税ではなく、あくまで「キャッシュを守り抜くこと」。

社長の安心と会社の成長は、健全なキャッシュフローから生まれます。