コラム

STEP2-4 資産管理会社を活用した節税スキームの全体像

税務戦略

「資産管理会社を作ると節税になる」と聞いたことがある社長は多いでしょう。
しかし実際に設立してもうまく機能していないケースも少なくありません。
なぜなら、資産管理会社は単体で効果を発揮するのではなく、 法人・個人・グループ全体の仕組みの中で動かす必要がある からです。

本記事では、資産管理会社を使った節税スキームの全体像を整理し、CFIO流の実務的な活用法を解説します。

1. 資産管理会社の節税メカニズム

(1) 法人税率の優位性

個人で所得を得ると最高55%の税率がかかります。
一方、資産管理会社を通せば中小法人の実効税率は約23%。
この差だけで大きな節税効果があります。

(2) 所得分散の仕組み

資産管理会社で役員に家族を登用し、役員報酬を分散することで、累進課税の負担を軽減できます。

(3) 経費計上の柔軟性

個人では経費にならない支出も、法人であれば経費化できる場合があります。
(例:管理費、役員給与、通信費、車両費など)

(4) 承継時の株式評価引き下げ

資産を資産管理会社に集約しておけば、株式の評価を分散でき、相続税負担を軽くする効果も期待できます。

2. 資産管理会社を活用した代表的スキーム

スキーム① 不動産所有スキーム

  • 個人で所有している不動産を資産管理会社に移す
  • 家賃収入を法人で計上し、法人税率で課税
  • 家族役員に給与を支給し、所得分散

スキーム② 株式・金融資産スキーム

  • 個人が保有する株式や投資信託を資産管理会社で管理
  • 配当・売却益を法人に計上することで税率を抑える
  • 投資の利益を法人内に留保し、再投資へ回す

スキーム③ 事業承継スキーム

  • 自社株の一部を資産管理会社に移す
  • 次世代を株主にして贈与・相続をスムーズに進める
  • 持株会社化によりグループ経営を安定化

3. 節税だけに偏るリスク

資産管理会社は強力なツールですが、「節税だけ」を目的にすると失敗します。

  • 保険を使いすぎて資金繰りが苦しくなる
  • 実態のない取引で税務調査に否認される
  • 将来の相続設計を考えていないため逆に税負担が増える

重要なのは「節税+資産形成+承継」をトータルで設計することです。

4. CFIOの視点:スキームを“設計図”で管理する

CFIOでは、資産管理会社を活用する際に「設計図」を作成します。

  • 会社(本業)で稼ぐキャッシュをどのように移すか
  • 資産管理会社でどのように運用するか
  • 個人の所得・相続とどう連動させるか

この全体像を設計図にまとめることで、節税スキームを「机上の空論」ではなく、実際の経営と人生設計に落とし込むことができます。

5. ケーススタディ:スキーム設計で手残りを増やしたL社

L社(年商4億円)の社長は、毎年多額の法人税・所得税を負担していました。
資産管理会社を設立しましたが、運用方針がなく効果が限定的。

CFIOが関与し、以下を実行しました。

  1. 資産管理会社を通じて不動産投資を開始
  2. 配当と役員報酬を最適化し、所得分散を実現
  3. 自社株の一部を資産管理会社に移して承継対策を準備

結果、年間の税負担が約700万円減少。
同時に、家族全体の資産管理体制が整い、将来の相続リスクも軽減されました。

まとめ

資産管理会社を活用した節税スキームは、単なるテクニックではなく「法人・個人・家族・グループ全体」を見据えた戦略です。

  • 法人税率の優位性を活用する
  • 所得分散で累進課税を抑える
  • 経費計上を柔軟に行う
  • 承継スキームとして機能させる

CFIOのSTEP2では、これらを統合し、資産管理会社を「節税・資産形成・承継」の三位一体の仕組みに変えます。

資産管理会社を“節税箱”として使うのではなく、“未来を守る経営ツール”に昇華させることこそ、真の節税戦略です。