中小企業の社長にとって、税金は「会社」と「個人」の両面で発生します。
ところが、多くの社長は 法人税は税理士任せ、個人の所得税や相続税は別問題 と切り分けて考えています。
しかし実際には、法人と個人の税務は表裏一体。
会社にお金が残っても、個人で課税されて消えてしまうケースもあれば、個人資産をうまく活用すれば法人税を抑えられる場合もあります。
本記事では、社長個人と会社を一体で考える「トータル税務設計」の重要性と実務方法を解説します。
1. 法人と個人を分けて考える弊害
(1) 法人は黒字、個人は重税
法人で利益を出すと法人税が発生します。
さらに役員報酬を高く設定すれば、個人で所得税・住民税が重くのしかかります。
結果として、全体では「手残りが少ない」状態に。
(2) 個人資産と法人資産の分断
法人でお金が余っていても、個人の相続対策をしていないと将来大きな税負担が発生します。
逆に、個人で不動産を所有していても法人経営に活かせないことがあります。
(3) 相続・承継の視点が欠ける
社長が急逝した場合、法人と個人の資産がバラバラに管理されていると、承継に大きな混乱を招きます。
2. トータル税務設計の基本フレーム
トータル税務設計とは、「法人税・所得税・相続税」を一体で最適化する考え方です。
(1) 法人税の最適化
- 節税と黒字のバランス
- 法人の利益を資産管理会社に移す
- 法人から役員報酬・配当の最適設計
(2) 所得税の最適化
- 役員報酬と配当のバランス
- 家族への給与分散(青色事業専従者や役員登用)
- 社長の退職金準備
(3) 相続税の最適化
- 自社株評価の引き下げ
- 生前贈与の活用
- 資産管理会社を通じた承継スキーム
3. 実務での組み合わせ例
ケース1:役員報酬と配当の最適化
役員報酬を高くしすぎると、個人課税が重くなります。
そこで役員報酬を抑え、法人に利益を残して配当で受け取る。
法人税と所得税のバランスをとることで、全体の税負担を軽減できます。
ケース2:資産管理会社の活用
法人の余剰資金を資産管理会社に移し、そこから不動産投資や金融投資を行う。
法人・個人の資産を一体で管理することで、相続税対策にもつながります。
ケース3:退職金制度の導入
社長の退職時に退職金として多額を支給すれば、法人の損金算入と個人の退職所得控除を同時に活用できます。
4. CFIOの視点:法人と個人の“二階建て設計”
CFIOでは、法人と個人を切り離さず「二階建て」で設計することを推奨しています。
1階(法人):本業で利益を出し、税務を最適化
2階(個人・資産管理会社):資産を承継・運用し、将来の相続まで見据える
この二階建て設計により、法人税・所得税・相続税を一体でコントロールできます。
5. ケーススタディ:トータル設計で手残りを増やしたJ社
J社(年商5億円)の社長は、役員報酬を年2,000万円に設定していました。
法人は黒字でしたが、個人課税が重く、毎年手残りが少ない状態。
CFIOが関与し、以下を実施しました。
- 役員報酬を1,200万円に抑え、法人利益を増やす
- 余剰資金を資産管理会社に移し、不動産投資を開始
- 将来の退職金を活用した節税プランを設計
結果、法人税と所得税の合計負担が約500万円軽減され、資産形成のスピードが加速しました。
まとめ
社長個人と会社を別々に考える時代は終わりました。
- 法人税・所得税・相続税を一体で最適化する
- 役員報酬・配当・退職金を組み合わせる
- 資産管理会社を活用し、法人と個人の資産をつなげる
これが「トータル税務設計」の本質です。
CFIOのSTEP2では、この二階建て設計を実務に落とし込み、社長の手残りを最大化すると同時に、将来の相続・承継まで見据えた戦略を構築します。
税務を“点”でなく“面”で考えることが、強い会社と豊かな人生を両立させるカギです。
