「会社全体では黒字なのに、資金繰りが苦しい」
「どの事業が儲かっているのか分からない」
「新規事業に投資したいが、既存事業とのバランスが見えない」
こうした悩みを抱える社長にとって、最も有効な管理手法の一つが 部門別損益管理 です。
これは、会社全体の損益を部門ごとに分けて把握することで、強い部分と弱い部分を可視化し、経営判断を正確に行えるようにする仕組みです。
本記事では、部門別損益管理の必要性と導入方法、そして経営に与える効果について解説します。
1. 部門別損益管理が必要な理由
(1) 全体黒字でも一部赤字が会社を圧迫
例えば、製造業では本業は黒字でも、新規部門や一部の取引先対応が赤字になっているケースがあります。
全体の数字だけ見ていると、赤字部門の存在に気づかず、会社の利益を食いつぶしてしまうのです。
(2) 正確な経営判断ができない
「どの事業に力を入れるべきか」「どの部門を縮小すべきか」を判断するには、部門ごとの損益を把握する必要があります。
これがなければ、経営判断は“感覚頼み”になってしまいます。
(3) 銀行からの信用にも影響する
銀行は融資審査の際、会社の収益力だけでなく、その「安定性」にも注目します。
部門別損益で安定的に利益を生む部門があると、銀行は安心して融資を行いやすくなります。
2. 部門別損益管理の基本構造
部門別損益管理では、売上・原価・経費を部門ごとに分解して管理します。
(1)部門別売上
各部門の売上を明確に切り分けます。
例:製造部門・販売部門・新規事業部門など。
(2)部門別原価
直接原価(仕入・外注費・人件費など)を部門ごとに按分します。
間接費についても合理的な基準(人数・稼働時間など)で配賦します。
(3)部門別利益
売上から原価を差し引き、さらに必要に応じて間接費を割り振ることで「部門別利益」を算出します。
3. 実務導入のステップ
ステップ1:部門区分を決める
会社の事業内容に応じて部門を区切ります。
多すぎると管理が煩雑になるため、最初は「主要部門+新規事業部門」程度から始めるのが現実的です。
ステップ2:売上と原価を紐づける
会計ソフトやExcelを活用し、売上と直接原価を部門ごとに紐づけます。
取引先や商品ごとに分けるケースもあります。
ステップ3:間接費を合理的に配賦する
家賃や管理部門の人件費などは部門ごとに配賦します。
完全な正確性よりも「経営判断に役立つ水準」で分けることが重要です。
ステップ4:定期的にレビューする
月次試算表と同時に、部門別損益も毎月レビューします。
会議で共有すれば、各部門の意識改革にもつながります。
4. CFIOの視点:部門別損益を“経営の羅針盤”に
CFIOでは、部門別損益を単なる数字管理ではなく「経営の羅針盤」と位置づけています。
- 儲かる部門に資源を集中
- 赤字部門は改善か撤退を判断
- 新規事業の採算性を早期にチェック
さらに、BIツールを活用してグラフやダッシュボード化することで、経営者が直感的に理解できる仕組みにしています。
5. ケーススタディ:部門別損益でV字回復したF社
F社(年商10億円)は、全体としては黒字でしたが、資金繰りは常にギリギリ。
部門別損益を導入したところ、販売部門が毎年赤字を出していたことが判明しました。
そこで、販売部門の不採算取引を縮小し、代わりに製造部門の収益性を強化。
1年で営業利益率が2%から6%に改善し、資金繰りも安定しました。
まとめ
部門別損益管理は、会社の強みと弱みを可視化する強力なツールです。
- 全体黒字でも赤字部門を見逃さない
- 経営判断を感覚ではなく数字で行える
- 銀行からの信用が高まる
CFIOのSTEP1では、この「部門別損益管理」を財務戦略の中核に据えています。
会社の未来を正しくナビゲートする“羅針盤”として、今すぐ導入すべき仕組みです。
