コラム

STEP1-5 黒字倒産を防ぐための“資金繰り表”実務活用術

財務・融資戦略

「決算は黒字なのに、なぜか資金が足りない」
「売上は伸びているのに、銀行残高は減っている」

このような悩みを抱える中小企業は少なくありません。
実は、倒産の約7割は「赤字倒産」ではなく「黒字倒産」だといわれています。

黒字倒産の原因は明確です。
利益と現金の流れは一致しないため、資金管理を怠ると、黒字でも資金ショートに陥るのです。

その最大の防止策が「資金繰り表」です。
本記事では、黒字倒産を防ぐために資金繰り表をどう実務に活かすかを解説します。

1. 黒字倒産が起きる典型的なパターン

(1) 売上の増加に伴う運転資金不足

売上が伸びると仕入や外注費が先行して増えます。
入金までのタイムラグがあるため、資金繰りが急激に悪化します。

(2) 借入返済と税金の負担

決算で黒字になると法人税が増えます。
同時に、銀行への借入返済が重なれば、一気に現金が不足します。

(3) 設備投資による資金流出

利益が出ているからといって安易に設備投資をすると、現金が枯渇。
融資が通らなければ、たちまち資金ショートの危険にさらされます。

2. 資金繰り表の役割

資金繰り表は「会社の財布の未来予測」です。
月次試算表が過去の成績表であるのに対し、資金繰り表は未来の資金残高を示します。

  • 1ヶ月後、3ヶ月後、半年後にいくら現金が残るか?
  • 借入返済や税金の支払いに耐えられるか?
  • 設備投資や新規事業に使える余剰資金はあるか?

これらを見える化することで、黒字倒産のリスクを未然に防げます。

3. 実務で使える資金繰り表の作り方

ステップ1:現金残高の把握

まずは「今日いくら現金があるのか」を正確に把握します。
複数口座がある場合は、すべて合算して管理しましょう。

ステップ2:入金予定の整理

売掛金の回収予定、借入予定、その他の入金を一覧化します。
特に入金サイト(何日後に入金されるか)を正確に管理することが重要です。

ステップ3:出金予定の整理

仕入・外注費・人件費・税金・借入返済など、出金予定を月別にまとめます。
賞与や税金など「突発的に大きな支出」がある月を特に意識してください。

ステップ4:資金残高をシミュレーション

入金と出金を差し引き、各月の資金残高を計算します。
資金不足が見込まれる場合は、早めに銀行と交渉したり、支払い条件を調整するなど手を打ちましょう。

4. CFIOの視点:資金繰り表を“銀行交渉ツール”に変える

資金繰り表は社内管理だけでなく、銀行との交渉にも有効です。

  • 「3ヶ月後に資金不足が見込まれるので、今のうちに融資枠を確保したい」
  • 「資金繰り表を毎月更新しているので、返済能力に問題ありません」

こうした説明ができる会社は、銀行から「資金管理能力が高い」と評価されます。
その結果、追加融資がスムーズに通り、資金ショートのリスクを回避できるのです。

5. ケーススタディ:資金繰り表で倒産危機を回避したD社

卸売業D社(年商8億円)は、売上は順調に伸びていたものの、資金繰りは常にギリギリ。
決算は黒字でも、賞与と法人税の支払いで資金ショート寸前になっていました。

そこで、CFIOコンサルタントの支援により資金繰り表を導入。

  1. 半年先までの資金残高をシミュレーション
  2. 賞与と税金の支払い月に資金不足が判明
  3. 銀行に資金繰り表を提示して、早めに追加融資を確保

結果、倒産の危機を回避し、むしろ新規設備投資を実現する余裕まで生まれました。

まとめ

黒字倒産を防ぐ最大の武器は「資金繰り表」です。

  • 売上の増加が運転資金不足を招く
  • 税金や借入返済が資金を圧迫する
  • 設備投資で現金が枯渇する

こうしたリスクを事前に察知するには、未来の資金残高を見える化するしかありません。

CFIOのSTEP1では、資金繰り表を単なる「管理資料」ではなく「経営戦略ツール」として活用します。
資金繰りを制することは、会社の成長と資産形成を制することにつながります。

黒字倒産を防ぎ、安心して未来を描くために、今すぐ資金繰り表を実務に取り入れてください。